グループメンバー紹介
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平 澤 元 浩
(助教、日本脳神経外科専門医)
徳島大学病院脳神経外科では年間40-50例ほどの脊髄・脊椎、末梢神経疾患の手術を行っています。脳神経外科で椎間板ヘルニアや手根管症候群の治療を行うことに違和感を感じる方がいらっしゃるかもしれませんが、本来脳神経外科は脳から末梢神経に至るすべての神経の外科治療を行う診療科目です。ちなみにアメリカなどでは脳神経外科医の扱う手術の半数以上が脊髄・脊椎疾患です。当科では脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどの脊椎変性疾患を中心に、脊髄損傷や圧迫骨折などの外傷、脊髄血管障害、脊髄腫瘍、二分脊椎などの先天奇形、手根管症候群などすべての脊髄、末梢神経疾患の治療を行っています。
診断に際してはMRIやCTを中心とした画像診断に加え、神経内科と協力して神経伝導の測定などの電気生理学的検査を用いて、神経学的診断を正確に行っております。
手術は顕微鏡下手術を基本としており、神経内視鏡や超音波骨メスなどの最新の医療器具を用いて行っております。また抜糸をしない手術、カラーやコルセットなどの簡略化など患者様が手術後早期に社会復帰できるよう努めております。当科行っているほとんどの手術で術翌日より歩行が可能です。術後3−4日目でシャワー浴が許可され、術後7−10日目で退院していただいております。手根管症候群などの末梢神経の手術は日帰り手術も可能です。
同じ脊椎の病気でも頸椎、胸椎の疾患は、進行すると後遺障害を残す恐れがありますが、腰椎疾患はかなり悪化してからでも十分な改善が見込めます。従って当科では頸椎、胸椎疾患はなるべく病状が悪化しないうちに手術治療を勧めますが、腰椎疾患はできるだけ内服やリハビリテーションなどの保存的治療を勧めています。ですので腰椎椎間板ヘルニアを手術することはほとんどありませんし、またその必要も限られると考えています。
2002年から2006年までの脊髄・末梢神経疾患の手術は203件でした。内訳は以下の通りです。
・頸椎変性疾患
116例
・腰椎変性疾患
33例
・胸椎変性疾患
6例
・脊髄腫瘍
6例
・脊髄脊椎外傷
12例
・先天奇形
11例
・脊髄血管障害
5例
・末梢神経障害
8例
・その他
5例
手術合併症は術後感染が1例、術後脳梗塞や心筋梗塞が2例、術後胃潰瘍が1例ありました。神経学的合併症は頸椎手術後の一過性の肩の運動障害や感覚障害が4例にありましたが、永続的な麻痺は出現していません。
以下に当科で行っている代表的な手術の説明をします。
手根管解放術の説明は
こちら
腰椎後方椎体間固定術の説明は
こちら
腰椎部分椎弓切除術の説明は
こちら
頚椎前方固定術の説明は
こちら
椎弓形成術の説明は
こちら
手首の付け根で骨と靱帯に囲まれた部分を手根管と呼びます。手根管の中には正中神経という神経が通っています(図)。手首をよく使う人や高齢者では靱帯が厚くなって手根管が狭くなります。その結果、正中神経が圧迫されて手のしびれ(特に親指から薬指にかけて)や痛み、指先が使いにくいなどの症状が出現します。しびれや痛みは腕に及ぶこともあります。
治療は手首の安静やビタミン剤、局所ブロック療法がありますが、これらが無効の場合手術を行います。
手術は局所麻酔で顕微鏡を用いて行います。手のひらのほぼ中心で手首に近いところを約2cmほど縦に切開し、靱帯を切断します。手術時間は1時間ほどで出血はほとんどありません。皮膚はテープで固定するため抜糸は必要ありません。手術当日だけ手首を添え木で固定します。
手術後はなるべく手首を挙上し患部を冷やします。これは術後の腫れを防ぐためです。傷の痛みに対しては痛み止めの飲み薬を使います。手術翌日には手首の固定は外します。傷口のテープは3-5日で外します。
傷の痛みや腫れのため数日から2週間程度は手術をした手は不自由になることがあります。術前の重症度によってはしびれは完全にはとれないことがあります。
腰椎固定術とは、すべり症を伴う腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアなどに対し、脊髄神経の圧迫を取り除くとともに、ぐらついている腰椎をスクリューなどで固定する手術です。
@全身麻酔をかけた後、体をうつぶせにして、腰に約15センチの皮膚切開を行います。
A筋肉を分けた後、腰椎の骨を一部削って、神経の圧迫を取り除きます。
B次にカーボン製の人工骨を椎間板の部分に埋め込んでぐらついている椎体を固定します。人工骨の中や周りには腰骨から採取した自家骨を移植します。固定を強固にするためにチタン製の金属で補強を行います。この金属は骨の固定が完成すれば半年から1年程で除去することもありますが、多くの場合はそのまま残しています。
手術に要する時間は除圧固定する椎間の数にもよりますが、平均3−4時間、麻酔時間を入れて5−6時間です。1椎間の手術では輸血は不要ですが、多椎間の手術では輸血を行うこともあります。
◆手術後は、1泊だけ集中治療病棟に入ります。翌朝までベッド上安静ですが、横向きに寝てもかまいません。水分は担当医の許可があれば、3時間後より少量とることができますが、食事は翌日からになります。
◆手術翌日より、腰にギプスまたはコルセットを巻いて、座ったり、歩行器で歩行することができます。夜寝るときはコルセットははずしてもかまいません。
◆点滴は2−3日で終了し、4日目から、シャワー浴ができます。傷はテープで固定するので抜糸はありません。また、術後は内服の痛み止めが処方されます。
◆手術後の骨や脊髄の状態をCTやMRIで確認した後、10−14日目くらいに退院できます。
↑術前MRI↑ 術後MRI↑単純X-P
腰痛、創部感染、足のしびれなどがあります。腰痛に対して術直後は痛み止めで対応しますが、退院時には軽快していることが多いです。傷が感染することはまれですが固定した金属の周辺に感染が起こった場合は、金属をはずすことがあります。
▼術後2ヶ月からは、安静時はコルセットをはずしてもかまいません。外出時などは着けてください。術後3ヶ月で完全にコルセットは除去します。
▼ お仕事は手術後1ヶ月目より事務作業、2ヶ月目より軽作業(家事労働含む)、3ヶ月目より重労働が可能です。車の運転も手術後2ヶ月目より許可されます。
▼ 退院後の外来通院は、最初は退院2週間後くらいに受診してください。その後は外来担当医が経過をみて判断します。
腰部脊柱管狭窄症では骨の間の黄色靱帯という靱帯が厚くなって神経を圧迫しています。手術の目的は後方から骨の一部とともに黄色靱帯を除去することです。
全身麻酔をかけた後、体をうつぶせにします。1椎間の手術では腰の真ん中に約5cmほどの皮膚切開を行います。骨の周りの筋肉をはがした後骨の一部を切除しその下にある黄色靱帯を取り除きます。1カ所の手術では手術時間は1時間程度、麻酔の時間を含めると3時間ほどで終わり輸血も必要ありません。
骨切除範囲(右図円内)
手術後は1泊だけ集中治療室に入ります。背中の手術ですが仰向けに寝てかまいません。術後の痛みは多少ありますが痛み止めの坐薬や注射を使用します。
点滴は翌日までします。痛みが少なければ手術当日から座ってもかまいません。翌日には歩行が可能となります。食事も翌日の朝からでます。1椎間の手術では通常コルセットは使用しません。また傷はテープで固定しますので抜糸はありません。術後4日目にはシャワー浴が可能です。術後1週間から10日ほどで退院します。
肥厚した黄色靱帯により神経が圧迫されている
手術で黄色靱帯が除去され神経の圧迫も消失
退院後1−2週間は自宅で安静にしてください。お仕事や車の運転、家事労働は通常術後1−2ヶ月ほどで復帰できます。患者様の状態によって復帰の時期は異なりますので詳しくは担当医とご相談ください。
腰痛は術後1−2週間から長い方で1,2ヶ月程度続くことがあります。適切な治療やリハビリを行えば腰痛は消失します。神経障害は1%以下です。
前方固定術とは頚椎症や椎間板ヘルニアなどによって脊髄が圧迫されているのを脊椎の前方から取り除く手術です。
全身麻酔をかけたあと喉仏の下あたりを首のしわに沿って約5-6cm横に切開します。気管をすこし圧迫して頚椎の前方に至ります。椎間板は切除し、奥の方を顕微鏡で見ながらドリルを用いて慎重に削り取ります。椎間板があったところには人工骨を充填したチタン製のケージを挿入します。手術に要する時間は2-3時間、麻酔時間を入れて4時間程度です。手術中の出血はほとんどありません。
手術前
手術後
挿入されたケージ
手術後は一泊だけ集中治療病棟に入ります。手術当日より簡単なカラーを装着して座ることができます。水分は担当医の許可があれば手術3時間後より少量取ることができます。カラーは夜寝るときもはずさないようにして下さい。一般病棟に帰ってからは歩行器で歩いてトイレに行ったりできます。食事も朝からでます。点滴は翌日まであります。傷はテープで固定するので抜糸はありません。お風呂は手術翌日より下半身シャワーを、4日目より全身シャワーが使えます。術後5-7日目ぐらいに退院します。
退院後1-2週間は自宅で安静にしてください。カラーは1-2週間つけます。また手術後1ヶ月は寝るときは仰向けのまま寝て下さい。お仕事は1-2週間後より事務作業、1ヶ月目より軽作業(家事労働含む)、2ヶ月目より重労働が可能です。車の運転も手術後1ヶ月目より許可されます。退院後の外来通院ですが最初は退院後2週間めでその後は外来担当医とご相談ください。
傷の痛みはほとんどありませんが喉が腫れるため喉の痛みや声がすれが4-5日続きます。手術の時に喉を動かす神経の近くをさわるので声帯の麻痺が起こることがあります。この場合声がすれが2−3ヶ月続きます。
またカラーをむやみに外したりすると移植した骨がずれることもありますので、カラーのつけ外しに関しては担当医の指示に必ず従って下さい。
椎弓形成術とは頚椎症や椎間板ヘルニア、後縦靱帯骨化症などによって狭くなっている脊柱管を後方から拡大し脊髄の圧迫を解除する手術です。
全身麻酔をかけたあと体をうつぶせにし、後頭部から首の付け根まで約15cmほど縦に皮膚切開し筋肉を骨からはがします。その後ドリルを用いて骨(椎弓)を削ります。脊髄に近い大事なところは手術用顕微鏡を使って慎重に行います。骨が削れたら椎弓を左右に開いて間に人工の骨を挟みます。人工骨は特殊な糸で固定します。手術に要する時間は2-3時間、麻酔時間を入れて4時間程度です。手術中の出血は100-200ml程度で輸血をすることはほとんどありません。
術前(左)
脊椎の変形により脊柱管が狭窄し脊髄が圧迫されています。
術後(右)
脊柱管が拡大し脊髄の圧迫は消失しています。
手術後は一泊だけ集中治療病棟に入ります。手術当日は翌朝まで寝たままです(仰向けや横向きになってもかまいません)。水分は担当医の許可があれば手術3時間後より少量取ることができます。翌朝より簡単なカラーを巻いて座ることができます。カラーは夜寝るときははずしてかまいませんが日中はつけておいてください。一般病棟に帰ってからは歩行器で歩行できます。食事も朝からでます。手術後の点滴は手術翌日で終了し、内服薬(痛み止め)が1週間でます。傷はテープ固定しますので抜糸はありません。お風呂は手術後3,4日後より全身シャワーが使えます。術後10-14日目ぐらいに退院します。
退院後1−2週間はなるべく自宅で安静にしてください。カラーは退院後ははずしても結構です。お仕事は手術後1ヶ月目より事務作業、2ヶ月目より軽作業(家事労働含む)、3ヶ月目より重労働が可能です。車の運転も手術後2ヶ月目より許可されます。詳しくは担当医とご相談ください。
傷の痛み(首から肩が凝ったような感じ)が2〜3ヶ月続きます。入院中に凝りを和らげるリハビリを指導しますので退院してからも続けてください。また100人に3人くらいの割合で手術後肩の麻痺が起こることがあります。これは圧迫を受けていた神経が動くためとも、急に脊髄の血流が増えるためとも言われていますが原因はよくわかっていません。ほとんどの人は半年以内に良くなります。