徳島大学病院 脳神経外科 TOKUSHIMA UNIVERSITY HOSPITAL

椎骨脳底動脈血流不全に対する治療

椎骨脳底動脈とは

脳への動脈には血管には左右一対の内頸動脈系と椎骨動脈があり、後者は合流して脳底動脈になります。 これらから脳血管が分岐して、脳のそれぞれの領域を循環します。循環する領域から後方循環系とも呼ばれる 椎骨〜脳底動脈は大脳深部や後頭葉・脳幹・小脳を主に支配しています。

症状と診断

内頚動脈の血流不全がその支配する領域の機能から半身の運動麻痺や感覚障害、言葉の麻痺といった 比較的脳卒中と気付かれやすい症状で発症する事に対し、椎骨脳底動脈の血流不全では複視(ものが2重に見える)、 めまい、ふらつき、など他の病気でもみられる症状で発症する事が多いため脳卒中と診断がつきにくい事があります。 脳神経症状などが検出されれば診断がつきますので、専門医の受診が望ましいのですが、 軽度のめまいだけが症状の場合は専門医でも診断が困難な事があり、画像検査が診断の有力な手助けとなります。 当院では脳卒中診断の第1選択にMRIを用いており積極的に椎骨脳底動脈血流不全による 脳卒中を診断し治療に取り組んでいます。

治療方法

生活習慣病危険因子を持つ方、糖尿病、高血圧、高脂血症の方は動脈硬化のため血管の内腔が 狭くなっている可能性があります。椎骨脳底動脈に動脈硬化による狭窄があり、それによる血流不全症状が 出ていると判断されれば抗血小板薬などの薬で治療を行います。外科治療としては脳血流を補う目的で 脳血管にバイパスを設ける開頭手術や、血管を内側から風船やステントで拡げる血管内手術がありますが、 この部分の外科治療(開頭バイパス手術や血管内手術)にはまだ内科的治療(内服薬や点滴)を 上回る効果が証明されていません。それには生命に関わる病変であり容易に比較する研究が 出来ないという理由があります。脳幹というとても大事な部分を支配するこの椎骨脳底動脈には 非常に豊富な血管のネットワークがあり、症状がでにくいという特徴があります。 しかしひとたび太い血管が詰まってしまい、他の血管から血流が補われない場合、意識障害を呈し、 時には生命に関わる事態となります。当院では、症状が強く保存的治療では回復が期待できない患者さんや、 保存的治療にも関わらず症状が進行してしまう患者さんに対して、診断に引き続き迅速に 治療に移れる体制をとっています。代表的な1例を以下に示します。

治療前MRA

治療前MRA

治療後MRA

治療後MRA椎骨脳底動脈が描出されている

治療前血管

治療前血管撮影

バルーン(風船)カテーテルで閉塞部を拡張

血管内手術バルーン(風船)カテーテルで閉塞部を拡張

治療後血管

治療後血管撮影

(文責:松下展久)