徳島大学病院 脳神経外科 TOKUSHIMA UNIVERSITY HOSPITAL

特発性正常圧水頭症とは

特発性正常圧水頭症(idiopathic normal pressure hydrocephalus; INPH)とは、 クモ膜下出血、髄膜炎などの先行疾患がないにもかかわらず、髄液循環障害が起こり、脳室内に脳脊髄液が貯留する状態を言います。 脳脊髄液は脳室内の脈絡叢で1日当たり約500ml産生され、成人の正常髄液量は180ml前後で、1日に3〜4回入れかわっています。 髄液は主にクモ膜顆粒で吸収され静脈に戻ります。 この産生、循環、吸収の微妙なバランスがくずれたときに水頭症が出現します。 通常は60代、70代以上の高齢者に多く、はっきりと原因はわかっていません。

多い症状としては

歩行障害として、歩幅の減少、すり足、歩隔(両足の間)の拡大が特徴的で、 方向転換が困難で、歩行が不安定で転倒しやすい状態になります。

認知症状では、注意を物事に集中することができない、思考速度の低下、健忘症などが認められることがあります。

排尿障害は急に排尿したくなり、排尿を我慢することができない尿失禁が認められます。

画像所見としてMRI、CTにて脳室の拡大、シルビウス裂の拡大を認めるものの、頭頂部の脳溝は狭小化しており、 脳萎縮による脳室拡大所見と鑑別できます。

診断

正常圧水頭症の診断法として、当科ではUp&Go; test(Tap test)を行っています。 具体的には入院していただいて、腰骨のところより局所麻酔をして、髄液を30ml程度採取します。 採取前後で椅子に座った状態から合図とともに立ち上がって、3m先まで歩き、方向転換して、3m歩いて、 元の椅子に着席するまでの秒数を測定します。髄液排出前後で明らかに症状の改善が認められる場合は手術適応があると考えられます。 治療法としては、脳室‐腹腔短絡術(VPシャント)、腰部くも膜下腔‐腹腔短絡術(LPシャント)が一般的に行われます。 現在、当科ではLPシャントを第一選択としています。 具体的には、全身麻酔の状態で、側臥位にして腰椎部分に切開をして、チューブを硬膜下腔に挿入し、皮膚の下にチューブを埋め込み、 チューブの先端をおなかの中に留置します。手術後は体の外から、磁石を用いて、脊髄圧の排出の調整ができます。