私は現在(平成21年4月)、妻と共にアメリカはサンフランシスコにある カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco 「通称UCSF」)に留学しています。脳神経外科学医である私は脳血管障害に関する研究に、 外科医である妻は胸腹部大動脈瘤に関する研究に従事しています。 徳島大学脳神経外科からはこれまで、McGill大学(カナダ)、Toronto大学(カナダ)、 Berlin大学(ドイツ)、Bremen大学(ドイツ)等に多くの留学生を派遣し、 今春からはニューヨークにあるNorth Shore University Hospitalに一人留学する予定です。 私が留学準備を行った際、留学経験のある先輩方から沢山の体験談やアドバイスを 得ることができ、とても参考になりました。
私がUCSFを留学先に選んだ理由は、UCSFはアメリカ国内でも医学分野における研究が盛んな 大学で、最先端の医療、基礎研究を学ぶことができると考えたからです。 一方でアメリカ西海岸という陽気な環境の中、留学生活を楽しんでみたいという気持ちがあった事は 否定できません。サンフランシスコは全米で最も住みたい街の一つに挙げられ、 大都市を象徴するダウンタウンには驚くほどの高層ビルが立ち並ぶ反面、周囲は大自然に囲まれ、 国立公園やカリフォルニアワインの産地として有名なナパバレーまで車で数時間という距離にあります。 ロサンゼルスやラスベガス等の都市へも飛行機で1時間程度の距離で、週末の予定には事欠きません。
私の遊学内容はさておき肝心の留学内容ですが、私はUCSFにあるCenter for cerebrovascular research という研究室に所属し、脳動脈瘤、脳梗塞、脳動静脈奇形等、脳血管障害(脳卒中)全般にわたる研究を行っています。 当研究室にはヨーロッパやアジアから多くの留学生が集い、切磋琢磨しています。 私の主な研究分野である脳動脈瘤は、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血が依然致死率が きわめて高い疾患として知られており、脳動脈瘤破裂予防を目的とした治療の研究開発がアメリカ、 日本を問わず世界的に急がれている研究分野です。私も言語の壁に悩まされながらも、 世界の医学レベルに後れを取らないよう頑張っています。
徳島大学脳神経外科教室では脳血管障害に限らず、脳腫瘍、機能的脳疾患、 脊髄・脊椎疾患等の臨床・基礎研究を海外で研修してみたいと考えている研修生を募集しています。 興味のある方は一度お気軽にご相談ください。
(文責:兼松康久)
Center for cerebrovascular researchのメンバー。二列目左から1,2番目が筆者夫妻
研究棟の近くにあるMission doroles parkから見たダウンタウンの風景
トロント大学留学記
平成22年4月より、カナダ、トロント大学脳神経外科でリサーチフェローとして研究留学させてもらっています。 平成23年5月現在、ほぼ一年が過ぎました。海外留学は学生時代からの夢のひとつでしたが、多くの人のサポートとご理解を頂き、実現することができました。
トロント大学はカナダの第一都市であるトロントの中心にある、北米でトップクラスの巨大な総合大学です。カナダ中はもちろんのこと、 世界中からの学生や研究者が集まっており、厳しい競争の中でしのぎを削っています。ボスであるMacdonald先生はカナダ出身の脳外科医で、 くも膜下出血後の遅発性脳血管痙縮の臨床・基礎研究では世界的に有名です。その指導のもと脳血管痙縮のメカニズムと新しい治療について研究させてもらっています。
実際の私のプロジェクトは生理学教室のBolz先生との共同研究で行っています。脳外科のテーマを、生理学の手法で研究するという興味深いプロジェクトを任され、 期待と不安が入り混じった中でのスタートでした。徳島大学で他の脳血管障害の基礎研究をさせてもらったことがあったので、 脳血管痙縮というテーマ自体にはすんなり入ることができました。一方で生理学的な実験は初めてであったため実験のセットアップや手技の習得には時間がかかりました。 思考錯誤する中、仲間達に助けてもらいながら、何とか研究を軌道にのせることができました。Macdonald 先生はもちろんですが、 思いがけない出向先でBolz先生という熱意のある研究者で、また尊敬できる教育者のもとで研究ができることは幸運でした。
多くの助けやアドバイスはもらっていますが、プロジェクトに直接かかわっているのは私だけです。現在は別の施設にある2つの研究所間を行き来しています。 一見大変なようですが、一つのところにいるよりも結構良い気晴らしになり気に入っています。 脳外科の研究室は繁華街の中心近くに最近建ったばかりのThe Li Ka Shing Knowledge Instituteという施設にあります。 オープンフロアーの広い部屋をいくつかの研究室がシェアしています。ガラス張りの仕切が多い近代的な研究所で、テレビドラマにでてきそうな所です。 一方で生理学教室はトロント大学のキャンパス内にあります。公園や広場、歴史のある建物が近くにあり、野性のリスが走りまわっています (ただ日本のリスより2倍くらい大きいのには驚きました)。夏には芝生の上でランチを食べたり、日光浴をしている人を多くみかけ、 一歩研究室から出るとのどかな環境が広がっています。
研究室のメンバーはどちらも大学院生が中心です。カナダ人以外にも、多彩な国(中国、インド、エジプト、ドイツ、イタリア、セルビア)出身の人たちが働いています。 カナダ自体が様々な文化が混じっているだけあって、私が慣れる前にむしろ周りがこちらに慣れてくれた気がします。 私の変な発音の英語も推測して理解してくれるので助かっています(ただそのおかげで変な発音は直っていませんが・・)。
海外留学では英語会話、研究の進め方やまとめ方、発表・表現の仕方等、学ぶべきものはたくさんあると思います。 私自身それをどこまでできるかは分かりませんが、この貴重な体験を通して少しは成長できることと信じています。
海外留学のチャンスは遠いようで、実は案外近くにあるように思います。多くの人に是非、貴重な体験ができる留学を実現して頂きたいと思います。
(文責:八木謙次)
